はちみつ・lover
「大丈夫?メイクも全然してないし、顔色

悪いよ」

「・・・うん。多分大丈夫」

他の社員から書類を渡されても表計算をして

いても、「あの事」が引っ掛かって仕事にま

るで集中出来ない。気分が悪くなってトイ

レに行こうと廊下に出たら倉持くんと出く

わした。

「あっ、葵さん。おはようございます」

彼は私が不機嫌な事に気づかない様子で話

し掛けて来る。今朝見た光景がフラッシュ

バックしてしまい全く話す気になれなかっ

た。

「葵さん、何で黙って行っちゃったんです

か?朝食作って待ってたのに」


そんな事言われても・・・二人の間に入りづ

らかったんだもん。

とは言えずに結局黙り込んでしまう私。そ

れでも一つだけ言いたい事があった。


「ごめん・・・もう、話し掛けないでもら

えるかな」


そう言った途端、彼の笑顔が凍りつくのを

感じた。私の中になぜだか罪悪感が沸き起

こる。それでもその場にいる事なんて出来な

くてすぐに逃げ出した。
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