はちみつ・lover
何と驚いた事にリビングから彼も出て来

る。私は一気に血の気が引いていくのを感

じた。

「いや、いいから」

私はムリヤリ自分で荷物を持つとノソノソ

と長い廊下を歩く。丁度私が使っていい部

屋があったのでその前に雑に置いた。

「・・・何なの、あの二人」

部屋に入ると、なぜか涙が零れた。ムシャ

クシャして肩に掛けたバッグを放り投げ

た。


「・・・ダメだ。余計な事考えてたら頭痛く

なってきた」


その日、私はろくに夕食を食べる事なくリ

ビングのソファで眠りについた。こんな気

持ちじゃ、まともに彼の顔を見れそうもな

い。彼が気をつかって声を掛けてきたが一

切返事をしなかった。ただ心の中で罪悪感

と劣等感だけが募っていくだけだった。


朝になり、私は普段通り出社した。朝も彼

から逃げるように部屋を出て、恥ずかしか

ったけど朝食を電車の中で摂った。
< 44 / 122 >

この作品をシェア

pagetop