はちみつ・lover
「はあっ・・・はあっ、ふぅ・・・」


彼とそういう関係を持った後、私達は一糸

まとわぬ姿で抱き合っていた。私までもが

こんな最低な事をして、世間的には許され

るはずがない。こんな人間臭い最低な行為

を、他の人が知ったらどう思うのだろう。そ

れでも、そんな事考えていられないほどに陶

酔していた。今この時だけは、誰にも邪魔

してほしくない。彼と抱き合っていると現

実離れした世界に行ける気がした。

「・・・お前、今日から俺のものだから。

お前が欲しい分だけたっぷり愛してやる

よ」

そう言うと、キスをして誘惑するかのように

唇を舐められる。首筋に噛みつかれて激し

く痕をつけられてしまった。

「ちょ、ちょっとぉ。こんなの目立っちゃ

うよ」

「別にいいだろ。俺のもんなんだから。何

か文句あるか?それとも・・・物足りな

い?」

彼の少し口角を上げる笑い方は、中学生の

頃好きになった彼と何ら変わっていない。

あの時は思いも告げられずに恋が終わって

しまったのに、今になってこういう事になっ

てしまうとは。人生って全くもってどうなる

か分からないと実感した。
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