はちみつ・lover
「一緒に女といたんだろ?そいつが浮気相

手じゃねえのかよ」

「・・・違うよバカ」

彼は呆れたままリビングを出て行ってしま

う。残された私達には何とも言えない温い

空気が流れた。


翌日、私の心はまだモヤモヤしたまま。倉

持くんと日野が私の脳内で喧嘩を繰り広げ

ていて、小さな自分が何度も止めに入ってい

た。

「・・・こんな気持ちで結婚生活なんて送

れないよ」

私達はまだ婚姻届を提出していない。いっ

その事提出するよりも前に倉持くんから逃

げてしまえば楽になれるかもしれない。仕

事終わりに会社を出るとそんな妙な焦燥感

に駆られた。


「葵!」


突然、聞いた事のある声に呼び止められ

る。気づけば背後から誰かが私を抱き締め

ていた。

「・・・日野?何で、ここに・・・」

「前にたまたま会社から出て来るの見掛け

たから」
< 59 / 122 >

この作品をシェア

pagetop