はちみつ・lover
彼がまるで子犬のような目で私を見つめて

くる。私には一途だから甘えてくるのも日常

茶飯事だ。

「急がないの。まだまだ時間あるんだか

ら、一緒に過ごそうよ」

そう言うと彼はキラキラと目を輝かせる。

一気にかきこむと口元にご飯粒がついてい

た。

「もうっ、ご飯粒ついてるよ」

「葵さん、今日何するんですか?」

既に彼はワクワクした様子で全然落ち着き

がない。タメ息をつきつつティッシュでご飯

粒を取ってあげる。犬みたいで耳や尻尾が生

えているように見えた。



「・・・あぁ、大丈夫かなぁ・・・」


あっという間に時刻は午後5時30分過ぎ。私

は部屋で一人浴衣と格闘していた。

「これってどういう髪型が合うのかなぁ?

こんなのでいいの?あー分かんない」

「葵さん?そろそろ大丈夫ですか?」

マズい。一人でデカい独り言を言っている

内にもう行く時間じゃん!

「あーっははは・・・っと、どう・・・か

な?似合っ・・・てる?」
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