はちみつ・lover
「わあっ・・・凄い、人だらけ」


夏祭りの会場に着くと、既にそこは人で溢

れていた。そのほとんどが浴衣を着てい

る。身構えていただけにホッと一安心し

た。

「それにしてもさ~、女子みんな飛鳥の事

見過ぎな気がするんだけど・・・」

「ええ?そんな事ないですよ」

彼は気づいていないが、人混みの中を歩い

ていると女子がみんな目をハートにして彼

を見ている。やっぱりイケメンはモテるん

だなとうんざりした。

「ふぅ、やっと人混みから抜けた・・・」

私は彼を押して進む事で精一杯。人混みか

ら解放された時にはじんわり汗をかいてい

た。


「葵さん、汗かいてますよ」


彼は持っていた小さなバッグからハンカチ

を取り出すと私の汗を丁寧に拭き取ってく

れる。そのバッグには私の財布も入ってい

て、私に荷物を増やさないようにと彼が気

をつかってくれた証拠だ。
< 83 / 122 >

この作品をシェア

pagetop