はちみつ・lover
「はぁ~、お腹いっぱい。楽しかったね」

「そうですね」

それは、夏祭りをやっている神社を出た時

だった。

「俺、この世界で葵さんと出会えて良かっ

たです」

彼は道路の真ん中に立つと、両手を私に向

いてブンブンと振ってくる。そんな彼を見
          ・・・・・・
て、私も幸せだった。その時までは。



「飛鳥!車!車来てる!逃げて!!」



私は必死になって叫んだ。だって、彼のすぐ

側まで大型トラックが近づいていたから。

そして、彼がそのトラックを見た時にはひ

かれていた。一瞬で目の前から彼が消えて

いた。


「いっ・・・いや、嘘・・・だよね?飛

鳥?飛鳥・・・どこ!?飛鳥!?」


私は突然の出来事に涙さえ出なかった。大

型トラックは私のすぐ側でハザードランプ

を点灯させて停車している。中から運転手

が降りてきた。
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