その景色はどれだけ考えても思い出せない
その夢
 この匂い、この音、全部知ってる。でも何も見えない。木のいい匂い。心が落ち着くこの匂い。水の流れる音。すべてが浄化されるようなこの気持ち。でも何も見えない。音が大きくなる。私のすべてを飲み込むように、
 

  ピピピピピピピ
 


 この匂いと音には何とも合わない、電子音。夢か。私の夢はいつも何も見えない。でも、どこかこの都会の雑音と排気ガスのにおいから離れた、特別な場所。


 でも一度だけ見たことがある。覚えてないけど。見たっていう感覚が、ずっと心に残ってる。

 起きたところで母はいない。学校、遅刻しようかな

          *
       
 俺はただひたすら走っている。何も見えないのに。木の匂い、水の流れる音。夢、と気づきつつも、走る。何かを探してるんだろうか。

   








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