先代の私 でも、、、
「……良いよ」



「っ!」



静夜が顔を埋めたまま反応した。



「家業、私同伴なら。だけど………」



「っうんっ」



…本当は家業なんて、大学を卒業してもなるべく手出しさせるつもりなんて無かった。



だが、こんな風に頼まれてしまっては……。



好きな相手には好きな相手が居て、手出ししようにも手出し出来ない。



私と似た状況じゃないか。



私は、近くに居る事もないから簡単に……とまでは言わなくても、諦められた。



内心。本心は分からない。

諦めきれてないかもしれないが、以前よりマシになった。



何せ側に居ることなんて無いから。

話したことすら全然無いから。



ハハッ、好きとか言ってたのに、事実本当の片思いだな。



………そんな私に比べて静夜は、朱里が好意の隠る視線を綾人に向けるのを側で見てるのだ。



私は、逃げ出したも同然だった状況。



部屋に影が出来た。



「静夜、彩華さん、入りますよ」



綾人の声がし、襖が開くと思ったとき静夜が言った。



「ゴメンっ、先にお風呂行ってて」



「っ!……はい。でも、待ってますからね」



「………うん」



いつもと違う静夜の声音から察したのか、6代目達は引き返して行った。



廊下を進む足音が完全に聞こえなくなってすぐ、静夜が絞り出すような声で言った。



「お姉ちゃん、僕、どうしたら良いかな」

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