先代の私 でも、、、
好きだった。

理由もなく好きになっていた。



諦めたつもりだった。

もう好きだなんて思わないと思っていた。



それなのに全然諦めてなどいなかった。



そんな相手、綾人にキスをされている。



腕を固定され、身動きを封じられているから抵抗できないんじゃない。

私の身体が抵抗しようとしていない。



息が苦しいっ。

恥ずかしいっ。



なのに、抱き締められ密着された身体から伝わる体温に落ち着かされている様だ。



「んっ」



唇が離される。



「ハァッ、ハァッ」

「ハァッ、ハァ」



私も綾人も息切れしている。



身体が熱い。

恥ずかしい。



今まで私が言っていた一人言も、隠しもせずに向けていた泣き顔もそうだ。



だがそれよりも、唇に残る感触が。

抱き締められるように密着している身体が。



「ね?ハァッ、現実っ、ですっ」



顔を、目を真っ直ぐ見つめられ、かあっと顔が熱くなっていく。



「////」



すると、綾人も同様に顔を赤くしている。



気になるが、気になるんだがそれよりもだ。



夢でなく現実なら、私は綾人を突き放さなければならない。



綾人の素性は知らぬものの、裏世界を取り締まる風魔家の私と居れば、

何かしら危険が伴う。



………なのにっ、それなのにっ、

突き放せない。



突き放せるはずがない。

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