先代の私 でも、、、
両想いだと分かり、こんなに近くに居るのにっ。



こんなにっ、今、幸せなのにっ。



言えないっ。

私は止めとけと。諦めろと。



拒否する言葉が…出ないっ。



朱里を応援することだとしてもっ、言えないっ。



好きだから。

手放したく…ない。



顔に熱いまま、またポロポロと涙が流れ出る。



「彩華さんっ!?」



驚かせたらしく、綾人が声を上げた。



とにかく、今度こそ顔を見られぬように顔を手で覆う。



手放したくない。

でも、綾人を危険にさらしたくないっ。



………っ。



「嫌……でしたか?」



嫌じゃないんだっ、嫌じゃ……。

とても、嬉しいのにっ。



私はただ首を左右に振ることしか出来ない。



「なら、どうして………!」



ハッとした様子の綾人。



気になって手の隙間から見上げてみると目が合った。



っ!

とても柔らかく、こちらまで安心させる様なこんな表情をしている綾人。



「彩華さん」



声音も優しく、涙が止まって濡れた頬を拭いながら見上げる。



「僕は、覚悟出来てます」



覚…悟?



「静夜から聞きました。きっと今泣いていたのは、諦めようとしてたからですよね?」



っ!



「図星ですね。………僕は桜花の総長もやってますし、家も家なので心配要りませんよ。

第一、危険も承知で今ここに居ますから」



確かに、桜花の総長は外部に滅多に知らせないようにしてる上、

情報のロックも私を含めた先代や、現役達もやってるので狙われる可能性は少ないが、



それでも世界No.1。



この座を狙おうとする者は山の様に居る。

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