先代の私 でも、、、
ーーバタバタバタバタっ



端から見れば一瞬だろう。



とにかく、階段を上って1つの扉の前に立つと……。



「嫌っ、止めてっ」



微かに聞こえた若い女の声。



当然扉を蹴破り、中を見ればそこには1人のしゃがんだ男の背があり、

男の足元からは……、女の細く白い足が見えていた。



結構な音を発てたのに止まらない男。



性的な行動をしてるのは確かだ。



助ければならないのに、助けようとしていたのに。



「綾人……君……、助けて」



その言葉で一瞬身体が動かなかった。



思い出したくなかった。



名を、いや桜花を思い出すと必然的に浮かんでくるその名を。



私の、先代としてあってはならないこの感情を。



………だが、こんな私情を挟んでる場合ではないのだ。



動かなかった身体を無理やり動かし、男の脇腹に回し蹴りを加減なしで入れる。



男は見事にぶっ飛び、壁に激突して完全に気絶したのが確認出来た。



仕事も完了したため、家紋の入ってある方のパーカーのフードを被り、

家紋の首飾りも隠すようにして服の中に仕舞う。



一応、関係の無い者に顔を見られないために。



………で、だ。



目の前には下着姿の朱里が、流れ出る涙を必死に拭っている。



服はと思ったが、この調子では先程の服を着せる訳にもいかず、

予備の上に羽織っているパーカーを渡して、デリカシーは無いかも知れないが言う。



「朱里、今は倉庫に、桜花に戻るぞ」



「っ!」



自分の名を呼ばれたからか知ってたからか、桜花である事を知ってからか何なのか、

とにかくパッとこちらを見た朱里。

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