僕と城矢君の平行線は。
2人でほんのり赤みがかった通学路を歩く。

歩いているのは城矢君だけだけど。


「あの…ありがとう。今日はその、運んでもらっちゃうし。」

「あはは、気にすんな。あのまま1人で帰すの心配だったからさ。」

「そ、そう。」

「あぁ。」


どうしよう。

会話が終わっちゃったよ。

なんか気まずい。

顔を起こして前を見ると城矢君の黒い髪が目に入った。

柔らかそう。

そっと触ってみる。

ほのかにシャンプーの匂いがする。

ドキッ

顔が熱い。

「ん?どうしたの?」

「な、なんでもない…!」

急いで手を引っ込める。

ドキッてなんだ。

ふぅ。


「あ、そういえば道合ってる?確かこっちだと思ったんだけど。」

「うん、合ってるよ。そこを右に曲がって…。」

「了解。」




城矢君にとったら当たり前のことなんだろうな。

誰かを心配して、手助けをして、こうやって一緒に帰ることも。


でも僕にとったら、誰かと帰るのって久しぶりだし、こうやって心配してもらうことも久しぶりなこと。

僕がスカートだからか、僕の腰には上のジャージが結ばれていた。

背負ったときに下着が見えないようにしてくれたんだろう。

こうゆう気づかいもさらっとしてしまう。

彼が人気者な理由がわかった気がした。
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