僕と城矢君の平行線は。
車道橋を僕らは進む。

運転手がすれ違う度に見てくるけど、もう気にしない。


「星南さん、ちょっと質問いい?」

突然のことに少し驚いたが、いいよと言った。

改まっていたけど何かあったのかな。

「…いや俺はもう友達かなーって思ってさ!」

「…ん?いきなりだね。」

「だから質問いい?って聞いたんだよー。」

「僕は…。」

言葉が出ない。

僕はどう思っているんだろう。

それよりも今の素直な気持ちを言う。

「友達になってとか言うの、城矢君だけだよ。僕は学校の嫌われ者だって知らないの?」


知らないはずがない。

だってこの学校で起きたことなんだから。


「んなの関係ないじゃん。」

「俺は俺の見たものを信じる。それに星南さんは噂通りの人じゃないよ。」


「あはは…そうか…っ…。」

「あれ…?…いや、だな…!な、んで…?」


僕の目から1つ、2つと何かが落ちてくる。

それは止まることを知らない。

つんと鼻が痛くなって、喉も熱くなってくる。

そしてどうしようもないくらい胸が締め付けられる。



いつからだろ。

もう泣くこともないだろうって思ってた。

いや、泣けなくなってるって。

あれ以上に辛いことなんて起こるって思ってなかったから。

でも僕が泣いたのは辛いからじゃない。

嬉しいからだ。

僕を見てくれたから。

どんな噂にも振り回されず、本当の僕を見つけ出してくれた。

嬉しさで流す涙は、どんな涙よりも気持ちを溶かしてくれる。


「頑張ったな。」


僕は泣いた。

僕を縛り付ける感情がぷつんと切れたから。

今まで溜まっていた黒くて…寂しくて悲しくて、辛かったことを出す。


城矢君は僕が泣き止むでゆっくり歩いてくれた。

僕はその優しさにまた感謝して泣いた。




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