社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
居酒屋に着くと仕切りの着いた二人用の席に通され、予定通りの海鮮丼の定食を注文し、更には相楽さんのお許しが出たので甘めのカクテルも注文した。


相楽さんは運転がある為にお茶にしたのだが、健康に気を使っているのか、黒烏龍茶だったりもする。


海鮮丼なのに箸でかき込まずに綺麗に食べる姿を見ては、またキュンとしてしまう。


姿勢の良さと箸の使い方が綺麗で、皿を持ちあげて食べる様子を見ては育ちの良さを感じる。


「相良さんって、いつ見ても箸使いが綺麗ですよね」


「…あぁ、箸使いね…。小さい頃、副社長と一緒に箸の使い方の教育をされて、箸の先を余り汚さなくなった」


アッサリと答えているけれど、箸の先から1センチ位しか汚していないのは、余程の訓練が必要だろうと察する。


それに比べて私と来たら…、3センチは汚してしまってるんじゃないの?


「どうしたの?食べないの?」


「たっ、食べますけど…」


箸が止まってしまった私に対して、相良さんが気遣うように尋ねた。


相良さんとのスペックの違いの差が開き過ぎていて、恥ずかしくて箸を使えなくなってしまった。


一旦、箸置きに箸を戻し、食を進めている相良さんを見つめる。


様々な面で釣り合わないのかもしれない。


相良さんは容姿端麗だし、育ちも良いし…、私なんて取り柄がないもの。


チビだし、童顔だし、仕事だって安定してないし、ピアノが弾けても役には立たない。


「…相良さん、私、あのっ…」
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