社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
相良さんは抵抗もせず、何にも言わず、まるで猫を撫でるかのように私の頭をクシャクシャと撫でる。


絡めた腕の体温が心地良く、汗ばみを感じない。


夜は少しづつ肌寒さを感じさせて、季節が夏から秋へと変わろうとしている。


「私、相良さんに相応しくなれるように頑張りますね」


箸先の使い方からフレンチの食事のマナー、料理の腕も上げたいし、相良さんに相応しい女性になる為には数を上げたらキリが無い程に学ぶべき事が沢山ある。


「和奏は和奏のままでいいよ。背伸びしなくていいから」


「それじゃ駄目です!相良さんの彼女と堂々と言える日が来た時に、相良さんが皆から避難されたら困りますから!」


「…っふふ、せいぜい牛乳でも飲んで頑張ってね」


「し、身長の話じゃないですよ!…って、聞いてます?」


声を潜めて笑う相良さんは意地悪で、155センチしか身長のない私を小馬鹿にするかのように話をはぐらかした。


相良さんが私の頭を再び撫でてから、車に乗り込む。


乗り慣れた助手席、安心する爽やかな香り、唯一変わった事は車内のBGMが相良さんの好きな洋楽に変わった事。


今までは副社長が置いていった音源だったけれど、最近では自分の好きな洋楽以外の私の好きな曲もかけてくれたりもする。


少しずつ知っていく相良さんの事。


これからも隣に居たいから、移り変わる季節と共に私も変わりたい。


まずは思い付くままに頑張ろう───……
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