社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
条件10*職場とのギャップは内密に!
相良さんに相応しい女性になりたい。


美人でもない、スタイルが良い訳でもない私と付き合ってくれている相良さんに対して、私が出来る事は努力する事しかない。


自宅でも職場でも練習しながら、食事を取るのが習慣になった。


相良さんの骨張った細い指が箸先を自由に操る様を想像しながら、食事を済ませるのだけれども…一向に箸先を使用する高さは変わらない。


ナイフとフォークの練習も欠かさず、動画サイトを見ながら独学でテーブルマナーを学んでいる、ある日の事…。


「お疲れ様です…」


聞き慣れた低い声が背後から聞こえた。


どんな風の吹きまわしなのか、はたまた疲れ過ぎてしまい思考回路がおかしくなってしまったのか…、職場の従業員食堂で食事をしていると斜め前に座って来たのは相良さんだった。


平然とお膳をテーブルに置き、椅子を引いて座った。


自分自身が職場での接近禁止令を出したくせに、堂々と斜め前の席に座った事に対して驚いている私など構いもせずに日替わりの魚定食を食べている。


周りを見渡せば他にも空いている席はあるのだが、何故、この席を選んだのだろうか?


「あの…どうしてこの場所に?」


「…たまたま空いていたからです」


「…そうですか」


勇気を出して確認をすれば、仕事モードの相良さんの素っ気のない返事が返って来た。


それ以上の受け答えはなく、会話もないままに二人で食事を済ませる。


食事の後、相良さんは私の事などお構い無しにスマホを操作し始めた。


そこまで素っ気なくしなくても良いのに…といじけ気味の私のスマホが点灯した。


どうやら、メールが届いたらしい。
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