社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
頬ずえをつきながら、届いたアイスコーヒーにガムシロップを入れてストローでクルクルとかき混ぜながら話す麗紗さん。


俯き加減で伏せたまつ毛の長さに驚きつつも、何処か寂しそうに見えた。


「胡桃沢さん…、貴方が私とは違う雰囲気の女性だったから戦意喪失したのは確かだけど…、大貴が可愛がるのも分かる!…だって、貴方は小動物みたいに小さくて可愛いもの!」


麗紗さんが私を見てニッコリと微笑むけれど、心からは笑っているようには見えない。


心の中では泣いているような、どこか曇っているかのような笑顔。


「…本当の事を言うとね、大貴は私の事なんて見てない事に気付いて、私は辛くなって逃げ出したの。付き合ってたけど…失恋してたの。

滑稽よね…」


「…わ、わ、…私だって、相良さんに冷たくあしらわれたりしてますよ?そ、それにっ…相良さんは今も麗紗さんの携帯番号を消してませんよ?」


"付き合っていたけど、失恋"


重くのしかかる言葉に自分の姿も重ねる。


「…相良さんは思い入れがあったからこそ、番号を消せなかったのかもしれないです!」


相良さんは好きでもない人と興味本位でなんか付き合う性格ではないと思うから、麗紗さんを嫌いになった訳ではないと思う。


私が初恋の人ではなければ、見ず知らずの私とは付き合う事はなかったはずだ。
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