社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
「相良さんなりに好きだったんだと思いますよ?人と関わるのが不器用な人だから、曖昧だったり、人前では素っ気ない態度をとったりしますけどね…。二人きりだと甘やかしてくれますし…」


自分勝手な人だと思っていたが、話を聞いている内に同情というか、次第に共感してしまい、ついつい感情移入してしまっていた。


「今のは…間違えなくノロケよね?フォローしたつもりがフォローになってないけど?」


「えぇー!?…す、すみませんでした!」


「ふふっ、いいんだけどね、別に!…胡桃沢さんって面白い人ね」


慌てふためく私を見てクスッと笑った麗紗さんは、前方部分の"何か"に気付き、席を立ち上がる。


「お疲れ様、大貴。カフェの前を通ったら彼女が見えたから立ち寄ったの。彼女、可愛くて良い子ね。大事にしてあげてね!…じゃぁ、またいつか!元気でね…」


麗紗さんから見れば前方、私から見れば後方から相良さんが現れた。


私の背後まで相良さんが近付いて来た時に麗紗さんは言葉を投げかけた。


麗紗さんの瞳からはポロリ、とテーブル上に涙がこぼれ落ちる。


「私…、結婚するの。音楽の先生も辞めるかもしれないし、大好きなピアノも弾けなくなるかもしれない。…それでも、たまには大貴と弾いたピアノを思い出すと思うから…」


頬に伝わる涙を拭い、強がりな素振りを見せる彼女は不謹慎にも綺麗過ぎて、見とれてしまう程だった。
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