社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
モヤモヤした気分のまま、いつものデータ入力をしながら当たり障りのない話を奈子ちゃんとヒソヒソ話す。


その内容は会議室の掃除中に相良さんと話したとか、すれ違ったとか、中学生レベルの初々しい恋愛程度の話。


「最近の相良さん、対応が柔らかくなったと評判が良いですよね。隠れファンも増えてきたみたいだし、先輩も頑張って下さいね!」


情報通の奈子ちゃんによると、相良さんは常にポーカーフェイスだけども、口角を上げて口元だけで笑う時は流し目で艶っぽいらしい。


私だけが社内で気付いていたのだと自惚れていたのだが、そうではない事に焦りを感じる。


相良さんはカッコいいもん、モテるに決まってる。


チャンスさえあれば声をかけようと思っている人は沢山居ると思う。


皆にも相良さんの魅力には気付いて欲しい気持ちもあり、気付いて欲しくない気持ちもある。


「…先輩っ、噂をすれば相良さんですよっ。早く電話受けてー!」


お客様が来店しないので、ついついヒソヒソ話に夢中になっていたら、秘書室からの電話が鳴った。


「はい、受付です」


内心はドキドキと胸が高鳴っているが、平常心を保てるように慌てずにゆっくりと話を聞く。


電話の主は相良さんで、『受付の仕事終了後に社長室に来て下さい』との事だった。


保育園関連の話は本決まりではないので守秘義務が存在するが、本日、社長と面談した後に決定されれば奈子ちゃんに話しても良い事になっている。
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