社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
「……私、全国大会で優勝しましたけど…、本当はね、お姉ちゃんの方がピアノに打ち込んでたんです。三歳年上のお姉ちゃんがピアノを弾く姿が素敵で軽い気持ちから私も始めたんですが…いつの間にか、楽しくなってました。
本当は大好きだったんですよね、ピアノが…」


「何で急に辞めたの?俺はずっと探してたのに…」


「…他にもやって見たい事があるかな?って探したかったからです」


「……ふぅん…、そう」


誰にも言ってない事がある。


ピアノコンクールで入賞したりする度に、お姉ちゃんよりも上の賞が付与された時などは子供ながらに接し方がキツくされた。


両親は喜んでくれたがお姉ちゃんからは冷たくあしらわれて憎悪しか感じられなくなり、精神的に疲れてしまい、中学校の時にはピアノを弾くのを辞めた。


それでも私の心の奥底ではピアノが大好きだったんだろう…、子供好きな事もあってか、ピアノとも関わりのある保育士を目指す事を決意する。


ピアノから一旦離れてもお姉ちゃんとの仲は修復出来ない事もあり、実家から飛び出すようにして東京の短大に入学した。


今、振り返れば…、運命の人との歯車は動き出していたに違いない。


ピアノが結んだ縁を大切にしなきゃね───……
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