社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
暑い中、公園に居ても無意味だ。


会社近くの公園に居たのは、電話をしたら相良さんと会えると思っていたからだ。


会えないのなら待つ必要もないし、公園から立ち去ろう。


こんなにも苦しくなるなら、片思いをしていた毎日の方が楽しかったよ。


「……ここに居たんですねっ、胡桃沢、さん」


「………!?」


「探しました、先ほどはすみませんっ…」


とぼとぼとゆっくり公園を歩いていた私の目の前には、一番会いたかった人物が居た。


息を切らして、眼鏡も少しズレ落ちていて、いつもからは想像出来ない姿をしている。


「…相良さん!?」


「あまり走るのは得意ではなくて、カッコ悪いのですが…。勤務中でしたし、副社長も隣におりまして、…あんな言い方しか出来なくてはすみませんでした」


息切れを少し残しつつ、相良さんは話しながら深々とお辞儀をする。


唖然としてしまった私の涙は自然に乾き、目の前の相良さんが愛おしくて抱き着く。


先程の電話の冷たさは何だったのか?


何故、息を切らしてまで探しに来てくれたのだろうか?
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