社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
相良さん任せにしたのが気に触ったのかな?


「……さっきは名前で呼んでくれたけど、今度は呼んでくれないんだ…」


そ、そっちが気になっていた訳ね!


相良さんだって、私の名前を呼んでもくれないんだからお互い様だよね。


「わ、私の事も名前で呼んで下さい!そしたら呼びますからっ」


「……和奏」


ボソリと呟く様に名前を呼ばれた後に、
「……これでいい?」
と聞き返す。


違う、違う、そうじゃない。


聞き返されたら、嫌々呼んだとか、私をなだめる為に呼んだとか、いらない憶測ばかりが頭の中によぎってしまう。


今、お互いが求めているのは、もっとこう自然な感じなんだと思う。


「…さっ、…相良さんが嫌じゃなかったら、お互いに呼び捨てで呼びませんか?」


「……はい。じゃあ、早速、呼んでみて?」


わ、私からなの!?


「…だ、い、…き、」


途切れ途切れに呼ぶのが精一杯で、まともに顔も上げられない。


やっとの思いで言ったというのに、相良さんからの呼びかけはなく駐車場に着いてしまった。


こないだのカフェバーの駐車場みたいだ。


「着いたよ、和奏」


「………!?」


「……"何か"されるとでも思った?」


「ち、違うからっ!」


恥ずかしいから俯いていた時、顔を覗き込まれたからキスでもされるのかと思い、ギュッと強く目をつむったら…ただの勘違いだった。


声が聞こえてから、ゆっくりと目を開くとクスクスと笑う相良さんの姿があって、私はからかわれた事に気付いた。


恥ずかしさを隠す様に先に車から降りて、ドアを勢い良く閉めた。
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