社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
条件4*週末でもお泊まり不可!
───相良さんが行きつけのカフェバーに入ると週末だからか、今日はジャズピアノの生演奏が行われていた。


店内は先日よりも混んでいて、私達は隅の席に通された。


この場所からは伴奏者は見えずにピアノの音しか聞こえないが、とても綺麗な音色にうっとりする。


「大貴も今日は弾いて行けば?明日は休みならラストまで付き合ってよ」


「…別にいい、弾かなくても」


こないだも居たお友達のバーテンダーが、相良さんをピアノに誘導する。


「あ、あの…相良さんって、ピアノ弾けるんですね!聞いてみたいです」


「うん、大貴のピアノは格別だよ。聞きたいよね?ほら、彼女が聞きたいって!」


そう言いながら相良さんの背中を二回叩く、バーテンダー。


相良さんが返事をせずにムスッとした表情をしているが構わず私に、
「彼女、お名前は?こないだ聞きそびれちゃったから。俺はバーテンダーしてます、後藤 翔平(ごとう しょうへい)です」
と自己紹介してくれた。


「相良さんと同じ会社で働いている、胡桃沢 和奏です」


「くるみさわ?名字も名前も可愛いね」


後藤さんがヘラヘラと笑って私と話をしている内に、ピアノの生演奏の音が聞こえなくなり拍手喝采で終わりになった様だった。


私達の話を聞いていた相良さんはいつの間にかご機嫌斜めになり、ジャケットを脱ぎ、ネクタイも外してどこかに消えた。
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