社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
「和奏ちゃん、上手だね」


パチパチと拍手をする後藤さんの横で、グラスに入った水を口に流し込みながら私を上から見下ろす相良さんに伝える。


「相良さんのおかげで忘れていた気持ち、思い出しました。ありがとうございます!」


ペコリとお辞儀をして、後藤さんとグラスをカチンと合わせて乾杯した。


相良さんは「…どういたしまして」と呟き、車のキーを取り、「暑いからエンジンかけてくる」と言って外に出た。


二人でカクテルを飲んでいると、

「大貴、照れているのかも。そう言えば、大貴が探していたのは和奏ちゃんだったのかな?…ピアノコンクールとか出た事ある?」

と後藤さんに聞かれたので、

「小学生の時に出ました。同じ場所に相良さんも居たみたいです」

と答えた。


「そっか!…だからか!うん、納得」と自己解決した後藤さんに頭を撫でられたが、私には何の事だかさっぱり分からなかった。


撫でられた時に相良さんが戻ってきて、私達は思いっきり睨みつけらて、「行くぞ」って腕を引っ張られた。


「またね」とヒラヒラと手を振る後藤さんに御礼を伝える間もなく、外に連れ出された私。


相良さん、ヤキモチ妬いてくれたのかな?


手を繋ぐでもなく、引っ張られている左腕が少しだけ痛い。
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