社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
猫も怖がらずに近寄るという事は、動物の本能が本当の姿を見抜いているのかもしれない。


ゴロゴロして、猫も懐いているみたい。


「猫好きなんですね」


私を見つけても、挨拶しか交わさない相良さんを覗き込むように問いかけた。


「人間1つくらいは好きなモノがあっても良いと思いますが…」


低い声のトーン、冷たい言い方で返事をされ、凹む。


会社付近では接近禁止なので、その反応は理解出来なくはないが、金曜日のデートの後だからか正直言ってキツい。


「お昼はもう済ませましたか?」


「はい、済みました」


ベンチの隅にはお弁当箱の包みが見えた。


「お弁当…ですか?」


「…毎朝、用意してあるので」


「…そうですか」


「…………」


会話が続かなくなってきた。


多分、相良さんは私に近寄って欲しくないのだろう。


分かりました、理解のあるフリをしてこの場を去ります。


「では、失礼します」


一礼をし、パン屋さんまで歩く。


そう言えば、相良さんはエチケットブラシ持っているかな?


猫の毛がスーツについてしまってるんじゃないか?


私はガザガサとバッグの中からエチケットブラシを取り出しUターンし、暑い中、急ぎ足で引き返す。


「はぁっ、良かった。まだ居た!はい、これ、使って下さいねっ。では、今度こそ失礼します」


戻ると相良さんはまだ同じ場所に座って居たので、ベンチにそっと置いてパン屋さんへと急いだ。
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