社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
金曜日、奈子ちゃんが体調不良の為に私は一人で受付カウンターに座っていた。


急な場合は他の派遣社員が捕まらない時もあり、一人で業務をこなす。


データ入力をこなしながら御案内をして、時にはお茶出しもする時もある。


パソコンと睨めっこしていた午後、カウンターにパサリと何かが置かれた。


目の前には相良さんが立っていて、置かれたのは先日のハンカチとエチケットブラシだった。


「お疲れ様です、ありがとうございました」


「お疲れ様です。こちらこそ、届けて頂きありがとうございます」


社交辞令の様な挨拶を交わし、スマートに過ぎ去る相良さんの後ろ姿を見てはキュンと心が締め付けられる。


ハンカチは隅々まで綺麗にアイロンがかけられ、エチケットブラシは貸した時以上に綺麗にメンテナンスされていた。


几帳面な相良さんらしい対応におもわず、笑みが溢れた。


適わないな、相良さんには…!


ハンカチとエチケットブラシをしまおうと手に取ると、ハンカチからカサカサと言う音がしたので広げると小さなメモが挟まっていた。


"土日の件、どうしたいかメール入れといて下さい"と手帳から切り取った様なメモに書かれていた。


相良さんの字はとても綺麗で、教科書のお手本の様だった。


真っ先に手帳に挟んで、私の宝物になる。


ハンカチもエチケットブラシも勿体なくて使えそうもなく、保管用になりそうだ。
< 51 / 166 >

この作品をシェア

pagetop