社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
これ以上、涙が流れないように唇を噛み締めてこらえる。


相良さんはそんな私の姿を見て動揺しているのか、目を泳がせた。


「……泣かせるつもりはなかったんですが…」


私の身体を優しく引き寄せて、相良さんに抱きしめられる。


相良さんの胸辺りにコツンと頭が当たる。


「副社長に迷惑をかけると言うのは建前かも知れません…。話をかけられたらもっと話をしたくなるし、一緒に居たくなります。…だから、社内では話をかけないで下さい」


思いも寄らなかった返答にキュンとして、胸がときめく。


……けれども、納得がいかない点もある。


「……はい。でも、相良さんからは話しかけても良いのに、私からは駄目なんて不公平じゃないですか…」


相良さんの胸におでこをつけて下を向いたまま、自分の意見を通す。


「…不公平でも仕方ないんです。誰も居ないのを確認してから話をかけています。胡桃沢さんは周りを見渡してはいないでしょう?…それでは駄目なんです」


先程、相良さんに声をかけてしまった事は本当に迂闊だったと反省しているけれど、私だって相良さんに話しかけたい。


「……会える時間を増やすので、社内ではお互いに我慢しましょう」


「……はい」
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