社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
必死に笑いをこらえようとしている相良さんは、手のひらで口を軽く抑えて肩は小さく震えていた。

そんな相良さんの姿を見て馬鹿にされてると思った私は、
「もうっ、遠足じゃないんだから、事細かに時間調整しなくていーですっ」
と反論したのも虚しく、更に笑われる。


「…っぷ!…遠足、ね!やっぱり、昨日から俺は引率の先生だったわけか…」


歩道を歩いている中、膨れっ面をした私の隣では、社内では冷酷なイメージを持ったポーカーフェイスの男が笑っている。


よほど面白かったのか、目尻に涙が浮かんでる姿は微笑ましくもある。


「もうっ、笑い過ぎだからっ」


「はいはい、」


気の抜けた返事をしながら、なだめるように頭を撫でられるのはこれで何度目だろう。


大切な物に触れる様に、優しく触れる手をいつまでも離したくないと思う。


「……相良さんの馬鹿っ」


「馬鹿って言われ慣れないので、新鮮な響きです」


「……っうぅ、 」


口角を上げて、流し目で見下ろされたら、完全に私の敗北です。


太刀打ち出来ず、頬に熱を帯びてドキドキしかしません。


そんなこんなで過ごした2日目、遅めのランチを取った後は明日から仕事と言う事で早めに帰宅命令中。


電車内で「…まだ早いのに」、とボソリとつぶやくと小さな溜息を残してから、「じゃあ、和奏の部屋でさっきのドラマ見る?」と耳元で囁かれた。


立ち乗り乗車をしていたので背中から覆い被さる様に囁かれ、吐息が耳にかかる。


私はただ小さくうなづき、目を合わせられずに下を向いていた。
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