社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
「…和奏、本当にごめんって」


「もう、いいです、別に。気にしてませんからっ」


氷が溶けきってしまい、周りに水滴のついたグラスを手に持ち、アイスカフェオレを飲み干す。


一度見たドラマなので頭の中に内容はほぼ入っているけれど…相良さんの顔を見たくはないので、食い入る様に見てしまう。


私が機嫌が悪いからか、相良さんも何にも言わずにドラマを見ている。


一定の距離間を保ち、ベッドに寄りかかって座り、黙ったままでドラマが第2巻へと移り変わる。


第2巻まで借りて来たので、見終われば相良さんとは今日はお別れなのに…不穏な雰囲気のままで過ごしたくないのは山々なんだけれども…

啖呵を切ってしまったので、引くに引けない。


どうしたら良いのだろう?


思わず小さな溜息を漏らしてしまった事に気付かれてしまい、横目で見られた。


「……見終わったら帰るから」


「はい、分かりました…」


溜息に気付かれてしまい、相良さんを嫌な気持ちにさせてしまったかもしれない。


"帰れ"って言うアピールじゃないの、逆なの。


本当はもっと一緒に居たいの。


帰ってしまうのが寂しくて、引き止め方も分からなくて…溜息をついてしまっただけなの。


勘違いして欲しくない、だから…。


「…あの、」


もういいや、からかわれていても、玩具でも。


私が相良さんと一緒に居たいのは事実なんだから…。


「ご、ご飯食べて行きませんか?…良かったらですけど…。美味しく出来るかは補償出来ませんが…」


他に繋ぎ止める術が分からず、ふと思いついた事を言葉にした。
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