社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
付き合っている事は確かなのだけれど、両想いだと言う確証はない。


片思いの恋人未満、暇つぶしの玩具が当てはまるのかもね…。


頭の中をグルグルと過ぎる想いに結論は出ず、再生されていたドラマが終わる。


「何を作ってくれるのか楽しみ…」


「…か、簡単な物しか出来ませんからっ」


停止ボタンを押して台所へと向かい、冷蔵庫の中身をチェックして、使えそうな食材を取り出す。


「助手なんで何でも言って下さい」


「じゃあ、玉ねぎの皮を向いて貰えますか?」


「かしこまりました」


返事の仕方が会社に居る時の相良さんみたいで、何となくおかしくなって思わず吹き出す。


指示された事を手際良くこなしていく相良さんを見て、この人に出来ない事なんかあるのだろうか?と思う。


天は二物を与えず───と言うけれど、相良さんには何物でも与えられている気がして、不公平だとも思う。


社内では頭痛明晰、容姿端麗で通っているし、ピアノの演奏も神業そのもの。


けれども、その何物にも与えられた事に対して相良さんは代償を支払っていた事を後程、知る事になる。


「…く、悔しいほど、包丁使いが上手いですね…」


相良さんに微塵切りを頼んだら、かなりの細かさで、料理にも貴重面さが出るのかと思うくらいに他の野菜も手際良く綺麗に切られていた。


私のメンツ丸潰れじゃないか、相良さん…。


まぁ、良いんだけれど…。
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