社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
「洗い物するよ」


「後は私がやります。座って待っていて下さい」


材料が全て切り終わり、手持ち無沙汰な相良さんが洗い物をしようとしていたので阻止するが大人しく座ってくれそうもなく、
「…うん、じゃあ、ここで見てる事にする」
と言い出して、私の側に立って料理の工程を見ている事になった。


すぐ横で、じっと見られていると緊張して動きがギクシャクしてしまう。


冷蔵庫にあった材料で簡単なピラフにしようと思ったのに、緊張のあまり、バターではなく油をフライパンに敷いてしまった。


仕方なく、キッチンペーパーで油を拭き取り、今更のバターを冷蔵庫から取り出す。


段取りが悪いと笑われるかな?


「言ってくれれば取ってあげたのに!あくまでも俺は補助だから何でもするよ」


何でもするなら座ってて!と言いたいところだけれど、一緒に料理をするのは新鮮で楽しいし、側にいて貰える幸せは手放せない。


「…彼女が作ってくれるご飯っていいよね」


「…か、彼女って、」


「和奏は彼女でしょ?違うの?」


「…ち、違わない…けど」


"好き"とは言われないけれど、言葉に含まれる単語に踊らされ、胸がキュンとする。


相良さんの口から"彼女"だって言われた事が嬉しくて、感情が表に出てしまい、口元が緩む。
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