社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
「あの、大貴…じゃなくて、相良大貴を呼び出して欲しいんだけど?」


「アポイントメントはお取りでしょうか?」


相良さんの名前を出されて、一瞬、ドキリとしたが平静を装い応対する。


本当は心の中はざわついていて仕方ないのだけれど、仕事だから…と割り切る。


「取ってないわよ?取らなきゃ駄目?…大貴が駄目なら、有澄でもいいんだけど?」


有澄…、花野井 有澄(はなのい ありと)副社長の名前まで出してきた。


この人は一体、何者だろう?


名前で呼ぶと言う事は完全にビジネスではないから突き返す事も可能だけれど、友人かもしれないし、親族の方かもしれないし…無下には出来ないよね。


「失礼を承知でお聞きしますが、どの様なご関係ですか?ビジネスではないですよね?」


精一杯の笑顔を作り問いかける。


「…そうね、ビジネスではないわ。古くからの友人よ」


「そうでしたか…」


「少しだけでもいいから話がしたいの。会わせて貰えないかしら?」


「かしこまりました。お名前をお伺い致します」


「坂上 麗紗(さかがみ れいさ)よ」


「相良に確認致しますので、少々お待ち下さいませ」


押しに負けた私は秘書室に電話で確認をし、同時に副社長にもお越し頂くように伝える。


来客だけれど、副社長室に通してとは言われなかったので、そのような決断を下した。
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