社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
目が合ったけれど思わず顔を背けてしまう。


「お疲れ様です…」


聞きたい事は沢山あるけれど、今は社内で勤務中。


顔を背けて歩き出すと台車が横にそれて、お茶のペットボトルのダンボールが少しだけ傾いて落ちる。


「あっ、…やっちゃった…」


しゃがんでダンボールを真ん中に直そうとすると、横側から足で押し出された。


「な、何で!足で押すんですか!」


あまりの事に驚き、声を張り上げる。


「…別に。機嫌が悪いだけ」


き、機嫌が悪いって私の方が機嫌悪いよ。


あの人は誰?貴方にとってどんな人?元彼女?


沢山、沢山聞きたい事があるのに聞けない。


心の中がモヤモヤしてる。


「…俺に何か言いたい事があるんでしょ?…言えば?」


冷たい瞳で見られ、上から見下ろされると威圧感が半端ない。


「あっ、ありますけど…勤務中だからいいですっ。失礼します…」


軽くお辞儀をして、逃げる様に立ち去る。


涙が溢れそうになるが、唇を噛み締めて我慢する。


この時に聞いてしまえば良かったんだ。


今更、後悔しても遅いのだけれど…。
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