社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
沈黙は続いて、しばらく無口のままドライブした後、目的地周辺まで来たのか細い路地裏の駐車場に車を停めた。


辿り着いた先は、照明をダウンさせ、中央にグランドピアノが置いてある落ち着いたカフェバーだった。


「いらっしゃいま…、大貴久しぶり。仕事お疲れ様」


「お疲れ様…」


相良さんの後ろに隠れる様にして、店内へと進む。


カウンターに居る若いバーテンダーと相良さんは知り合いらしく、店に入るなり挨拶を交わしていた。


「今日は女の子連れ?珍しいね!1曲弾いてあげたら?」


「今日はやめとく…」


そんな会話が聞こえたので、座ると同時に興味本位で質問する。


「ピアノ弾けるんですか?」


「……弾けますけど、大して上手ではありません。それより、何を注文しましょうか?」


あっさりと流されて、話の流れがオーダーへと転換された。


オーダーも大事だけども、少しくらい話題を膨らませてくれても良いのに…。


「私は運転もありますしカフェオレにしますが、胡桃沢さんは飲みたいものを注文して下さい。帰りは送りますから、遠慮なくどうぞ」


「送ってくれるんですか?でも、ここから遠いかもしれませんよ?」


「連れ出したのは私なので、きちんと送らせていただきます」


「あっ…ありが、と、ござい…ます…」
< 9 / 166 >

この作品をシェア

pagetop