満月の扉
小さい時には、両親に甘えたいと思う時期がある。
そんな時期が俺にもあった。
両親に無理言ったり、わがまま言ったりして、困るってわかってるんだけど見てほしくて、かまってほしくて、困ることばっかしてた。
その頃、ある時俺はまたわがままを言った。
◆◆◆◆◆◆
「…陽平。そろそろ寝る時間だよ。さぁおばあちゃんと一緒に寝よう。」
「嫌だ!僕お父さんとお母さんが帰ってくるまで待つんだ!」
「そんなこと言ったらお母さん達困るだろう?」
「…嫌だ!嫌だったら嫌だ!」
俺はそう言ってその場に座り込み、腕を組んだ。
『絶対待つんだ』
俺はそのことを体で表したんだと思う。
ただわがままというのをつきたかったのかもしれない。
かまってほしくかっただけなんだ。
するとおばあちゃんは「やれやれ」と言っているように優しいため息をひとつついた。
「…陽平。こっちへおいで。」
「僕は待つんだからね!」
「わかってますよ。いいもの見せてあげるからおいで。」
おばあちゃんは優しく俺の好きな笑顔を見せた。
『いいもの』って何だろうという探求心と行っていいのだろうかという疑惑のなかで俺は迷った。
でもおばあちゃんが、
「それを見ながらお母さん達待てばいいだろう?」
と微笑んで言ったから、俺はおばあちゃんの手を握って『いいもの』を見に行ったんだ。