Lingerie
「体目当てです」
「……はっ?」
沈黙を破って響いた言葉には間抜けな反応しか返せなかった。
何かの聞き間違いかと確かめる様に驚愕の表情を向けても返されるそれは何の揺れも見せない無表情。
あまりに反応が無いからやはり聞き間違いだったのだと納得しかけた瞬間であった、
「『何で?』の問いに一つだけ答えを返せるとしたら体目当てなんです。ミモリさんの」
これは…どう頑張っても聞き間違いという事にはならないな。
普通告白時にこんな事言うか?
体目当てだとか一番言っちゃダメなとこでしょ?
私じゃなかったら平手打ち物だと思うんだよ九条君?
そう……私でなかったら…ね。
「……条件、」
「条件?」
「体目当てでも何でもいいけど……私と一緒に住める?今日から、」
「今日から…」
「今すぐに」
これはさすがに『ごめんなさい』と言われて背中を見送るパターンだろうか?
彼の打ち明けで要求も相当なものであったけれど、私の切り返しも相当飛んで非常識な物だ。
無茶難題で振られているのだと解釈されてもおかしくない発言でもある筈。
それでも私は至って真面目にその要求を告げていたのだ。
そうして、そんな要求に対して彼の返答は響かず、代わりに与えられたのは、
「っ……」
無言で距離を詰めた彼からの真正面からの抱擁。
頬に掠める自分のモノでない髪の感触に擽ったいと感じた刹那、
「好きです。ミモリさん」
それがお互いの要求を承諾し合った合図の様に、耳に直に吹き込まれた言葉に何故だか安堵して泣きたくなった。
そうして……彼と私の付き合い0日の同棲が始まったのだ。