Lingerie
私が知って記憶していた九条君は、なんかウザったらしい前髪で顔を覆って、一つだけクリアな唇が描くのは真横一直線か悪態の為の輪。
それが彼の全てであると思っていたのに今目の前にいるこの男はどうだろう?
いつもの邪魔な前髪は両サイドに流され耳にかけられ、はっきりとお披露目された初見に近い両目は切れ長で睫毛が長い。
鼻の筋もスッと通って、何よりも意識を惹くのが色味の違う特徴的な双眸。
左目は普通の人と何ら変わらぬ黒目というやつであろう。
それでも右目は宝石の如く澄んだ水色の発色を見せて、光の当たり具合で濃かったり淡かったり、人を魅了するように姿を変える。
ただ一言だ。
ただ一言『綺麗』だと呑まれる。
そんな飲まれてる私さえもお構いなし?
ムードを作り上げるでもなく、扇情的な空気に持ち込むでもなく、本当にそれが目的だと躊躇いもなく伸びてきた指先が私の胸元で交差しているバスタオルを掴ん出来たものだから『ヒッ』とおかしな声を漏らしてしまった。
そして、
「……何で抵抗するんですか?ミモリさん。体目当てでもいいって言いましたよね?」
「い、言ったか言わないかで言えば言いました。…が!ちょっ、なんか色々と思わぬ事実に直面してすんなり受け止めきれないというか、」
「すみませんがそう言った時間のかかりそうな葛藤は俺の目的と欲求を為した後でお願いします」
「あっ……」
と、声を上げた時に抵抗の手を搔い潜りはらりと胸元の結びを取られた瞬間だ。
当然そこから露わになるのは無防備な裸体であって、温泉などの大衆浴場などの場でない限り人目に晒すことのなかったもの。