Lingerie
「…触りますね、」
「っ……」
また…。
彼はいつだって言葉より行動の方が少し早い。
今だってその一言が弾かれたのは白く細くも男らしく骨ばった指先が私の乳房を下から持ちあげるように包み込んで来てから。
五本の指を広げて包んで、感触を確かめる様に柔らかく動く。
そんな間も私の目と絡むことのない彼の視線はずっと胸元に固定されている。
こういうモノ?
セックスと言うのはみんなこういう始まりなの?
乏しい私の知識では始まりからもっと熱情的に絡み合って始まるものかと思っていた。
でもこんな風に静かに、何かを確かめる様に始まるのがリアルな時間?
だとしたら、熱情的に勢い任せなそれの方がまだ誤魔化せる術があるというのに。
こんな一つ一つじっくりと自分を吟味されるような感覚なんて時間の問題だ。
実際、
「っ…九条くん、あのっ、」
堪え切れないとおかしなプライドなど放り投げて降参の響きを口にした瞬間、思わぬ力に引き起こされてベッドにしっかりと座り直される形になった。
それには「はっ?」と呆ける間もなく、
「背筋伸ばして、」
「っ?!」
何で?と思うも何故だか大人しく従ってしまって、どういう状況なのだと緊張の間にも彼のよく分からない行為はひたすらに続く。
掌全体で感触を確かめていたかと思えば指先一つで下から上へと胸の膨らみを確かめる様になぞられたり。