Lingerie
この瞬間に全ての合点がいったというのか。
今までの緊張や羞恥の無意味な事にアホらしいと気が抜けてしまった程。
つまりは、
「体目当てってそういう事か」
無駄に緊張して損した気がする。
『好き』っていうのも私がではなくて私の『体』が。
道理で、九条君に恋なんて違和感だらけだと思っていたのだ。
ヤレヤレとやっと平常を取り戻す私に『早くつけてください』とこれまた空気お構いなしに要求する彼が、痺れを切らしたように私の身体を引き寄せ実に丁寧にブラジャーの紐を腕にかけてくる。
変なの。
恋人として初めての夜に脱がされるのではなく着けられている。
貴重品を扱う様に、愛情すら感じる所作で背中の金具を止められた瞬間には変にドキリとした。
間近で絡んだ彼の誘惑的なオッドアイと、背中に広がる掌の熱と、
「……やっぱり、最高ですミモリさん」
囁かれるような低い声に。
「これからは、俺の作った下着だけを着けてください」
「っ……」
なんて……妖しく危険で誤解をしてしまいそうな言葉と笑み。
俺のモノだと独占されるような。
誤解してはいけないのに。
あくまでも彼が独占したいのは私と言うよりも理想的な体だというのに。
馬鹿だ……誤解した心がまんまと彼の魅惑に恋心なんて物を作動させるなんて。