Lingerie
それからだ。
毎夜彼は私の体を貪るように、より鮮明に把握するように触れてくる。
へたな愛撫より愛情深く、熱を込めて、肌から、眼差しから、心から貪欲に欲する情を明確に見せつけ私を求める。
……『私を』じゃないか。
私の心は付属品にしか過ぎない。
どこまでも愛情を持って触れて、理想的な体を愛で倒してしまえば再び商品ではない彼の産物に身を包まれてお終い。
この瞬間が酷く愛おしく、酷く寂しい。
普段は覆い隠している端麗さを惜しみなく魅せつけて、いつもは無表情で感情を見せない顔に誘惑的な笑みを浮かべてこちらを魅了してくる。
私だけの特権。
でも『私の物』とは言い切れない特権。
「綺麗です」
そう言われる程に心が醜く『嘘つき』と詰る。
「好きです」
そう愛に満ちたような言葉を囁かれる程『嫌い』だと拒絶したくなる。
『嫌い』
彼を魅了する自分の身体が『嫌い』
どうせなら彼を嫌いになれたらいいと思うのに、嫌いになる為の要素はそこら中に散らばっていると思うのに。
今程愛情持って身につけられたこの下着を脱ぎ捨ててしまおうか。
彼の目の前で放って、こんなおかしな関係はもう充分だと。
『誰でも良かったのだ』と。
事は済んだと満足そうに一つのベッドに身を投じ始めている彼を見つめながら指先は下着に触れるのに。