Lingerie




「っ……」

不意に伸びてきた手に引き寄せられて、強引な力に引かれるまま倒れ込むのは彼の真横だ。

いちいち驚きの眼差しを向けてしまう私は滑稽なんだろうか?

これすらも毎夜の事。

驚く自分の視界の真ん前には酷く穏やかに笑む彼の顔があって、綺麗な水色が些細な表情の変化できらりと色を変えて見せる。

それが綺麗だと思う刹那に必ず、

「お待たせ、」

そんな言葉を落とされほんの僅かな体の距離も埋め尽くす様に抱きしめられるのだ。

『お待たせ』なんて。

まるで私がそれを待っていたかのような口調。

『寂しかったんでしょ?』

そう言うように自分の身体に与えられる温もりと髪を撫でる手の感触と。

「別に、待ってないんだけど?」

天邪鬼発揮につれない口調でそれを弾けば、

「フッ…ミモリさんって可愛い」

「っ…」

どこまでも彼の優勢だ。

いとも簡単に絆されて、変に甘い抱擁に『まあいっか』と断ち切る決意を後回しにされてしまう。

こうして蓄積されるのは甘さの抜けた虚しい感情ばかりなのに。

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