Lingerie~after story~
「何度もチャイム鳴らしても出てこないと思ったら……雄った九条の仕業だったのね」
こちらの込み入っていた事情を把握しても悪びれた様子もなく、気まずさも見せずに『もうっ』なんて頬を膨らませてこちらに近づいて来るイズミは本当に相変わらずだ。
むしろこういう場面を期待してワクワクして入ってきたんじゃ?という予想は外れていないだろう。
ヤレヤレと呆れる私の横でも同じ思考が一人、
「お前……分かってて入ってきやがっただろ?」
「あら、嫌だ何の事かしら?でも一言言っていい?余裕なくがっつく男はモテないわよ九条」
「明かりもついてない状況に突っ込んできた確信犯だろうがっ。ってかなあ、何で入ってこれたんだよ?鍵はかけてあったはずだぞ!?」
「「合鍵使ったから」」
「っ…!!」
彼の疑問に答えを返した声音は2人分。
私と、実にこの状況を楽しんでいるイズミだ。
そんな返答に衝撃を受け『はっ!?』と表情を固めて私とイズミを交互に見る九条くんにはどう対応したものか。
『うーん』と心で唸る私とは違いクスッと悪戯っぽく笑ったイズミが背もたれを挟んでスルリと私の肩に腕を絡めると、
「勿論、ミモリ本人から貰った合鍵よね~」
「まあ、そうね」
持っていた鍵を指先でくるりと回して九条くんに笑って見せるイズミは意地悪が悪い。
またそうやって、おふざけにもからかって、何て呆れた息を静かに吐いてしまう。
合鍵と言っても色めいた意味合いの譲渡じゃないのに。
お互いに色々と便利だからってだけなのに。