Lingerie~after story~
さっきみたいな激しさまではない。
息継ぎも適度に挟ませてくれる戯れ合う様なキス。
キスにも……種類や持ち合わせる気持ちが様々あるんだな。
そんな事を小さく学びながら不器用ながらもキスに応えていたけれど。
不意に空気に震え鳴り響いた音は九条くんのポケットから。
どうやら着信らしいコール音にさすがに静かに離れた唇は舌打ちを響かせ不満げだ。
そんな反応で分かってしまう。
多分、彼は……タイムリミット。
「ゴメン、もう戻らないとだ」
「ん……いいよ。お母さん待たせちゃ悪いから行って」
「…………はぁぁ、行きたくね」
「……………………………行ってほしくないけどさ」
「っ……そのさ、ぼそっと聞こえないくらい小さく可愛い本音漏らすのも本当にやめてくれない?何?今日は戻れないってのに嫌がらせ?」
「だって………ボソッ……」
「何?今度は聞こえなかったんだけど?」
「……っ……プリン作って待ってるって言ったの」
「……………………成程、『寂しい』って言ったのね」
そんな彼の都合良しの言葉の変換にムスッと眉根を寄せてみるも決して否定をしようとは思わない。
だって……見事なる変換だ。
『寂しい』と心底思って行ってほしくないと我儘な心がここにある。
そんな私を宥める様にポンポンと頭を撫でてくる九条くんの手は大人に感じた。
年下の癖に…。