Lingerie~after story~
それなのに自分が突っ込みを入れきる前にいつの間にか背後の迫っていたらしい姿に言葉を落され萎縮する。
だって、今とっても私的には気まずいと言える相手の声音。
振り返らずとも理解する程馴染みきったそれはつい最近まで誰よりも私に平穏や安堵を与えてくれるものであったのに。
今はゾクリと体が震え、その癖変に身体の熱が上がって動揺に満ちる。
そんな自分を本人に露見出来る筈もなく、足早に逃げ出そうとするも私の行動なんてお見通し。
背後にあった気配は素早く真横に移動して、私の進行を阻んできたのは壁に向かって伸ばされたすらっと長い左足だ。
咄嗟に持っていたファイルで顔を隠すも全くもって無意味である事は百も承知。
そんな私に向けられる呆れたような声音の追及。
「何逃げてるのよ、」
「っ……いや、ニゲテナイヨ」
「ファイルで顔隠して声硬くして説得力ないのよ」
「っ……」
ああ、無情な。
『馬鹿ね』と言いたげな感じにあっさりと奪われてしまった最後の砦。
ファイルを奪われてしまえば諦めて対峙するしかない姿は今日もまた磨きがかかって美しいと言える。
どうやら生地のサンプル集めからの戻り。
その両手は選び抜かれたらしき生地やレースが収まっていて、だからこそこの足技での私の引き留めだったのだろう。