Lingerie~after story~
振り返り捉えたのは自分の恋人と言える九条くんの姿。
それでもだ、会社で定番のもっさい彼の姿は皆無で、普段は鬱陶しく下ろしている前髪を今はキッチリ持ち上げ邪魔にならないようにピンで留めている。
つまりは普段隠されている魅力的容姿のお披露目状態で、それ故にカフェテリアの女性陣のざわめきが少々色めいたものに変わっていたのだ。
それが当然の様に彼の不機嫌を煽るらしく、いつも以上に深く刻まれた眉間の皺と鋭い目つき。
「爽、その眉間の皺取りなさい。そんな強面の子産んだ覚えないし、いつも言ってるでしょ?印象は大切だって」
「これでも俺的精一杯な愛想のある顔なんけど?アリアさん」
「上司に反論……減給かしら」
「ふざけんな。どんだけこの会社に奉仕して貢献してると思ってやがる」
「奉仕して当然。貢献出来なきゃ息子だろうがとっくに干してるわよ。そんな事を偉そうに並べて吠えるんじゃないわよ。悔しかったら私がひれ伏して『生まれてくれてありがとう』と泣くほどまでにこのブランドを大きく発展させてよね」
「っ……強欲」
「強欲でなければ社長業なんてやってられないわよ」
そんなような会話が遠巻きに聞こえる。
ああ、見た目だけはお姫様の様な姿であるのに、口を開けばあの九条くんを黙らせるほどの女王様。