Lingerie~after story~



始まりに恋心なんて甘い感情は皆無。

少なくとも私の方は。

体目当てと宣言された関係は文字通りなのだと思っていた。

男女の差し当たるべきは艶めかしい夜の関係と言うのか。

まだ男知らずなこの肌に最初の熱や刺激を刻みこむのが、まさか自分の会社で悪評高い男になるとは。

そんな風に数奇な成行きに特別悲観もなく、長年無意味に守られていた貞節をいよいよ捨て去る時が来たのだとそれなりに意気込んで迎えたというのに。

『触らせてください』

そう改めて告げられ迎えた夜は自分が思い描いたような男女の時間とは大きく異なり、それでもその響きと意味合いのまま彼の欲求が尽きるまで貪るように触れられた。

ランジェリーデザイナーであるこの男、九条 爽はウチの会社で一二を争う売上貢献者だ。

今目の前にある姿こそは見目麗しく、切れ長で黒と水色と色味の違う双眸には思わず見惚れて息を飲んでしまう程だ。

それなのに昼間の社内ではこの人目を引く容姿はガラリと変わり、綺麗な双眸は長ったらしい前髪に覆われそれだけで印象は拒絶的だと言うのに口を開けば更に悪印象。

相手が女性だろうとお構いなし、自分の仕事を妨げる者には容赦のない言葉の鉄槌。

よくもまあ訴えられないモノだと、その場面を見る度に目を細めてしまう程。

彼の凄いところ。

そんな悪印象を相殺し、更には尊敬を得る程手がける仕事には崇拝者が多いのだ。

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