Lingerie~after story~
立派な門構え。
それこそ徳嶺の門構えに引けを取らず、漂う空気も厳かで重苦しくて。
久しぶりに感じる緊張感だと、変に高鳴る胸を撫で宥めながら息を吐き扉に手をかけた。
門を潜って敷石を踏みしめ、時期的に鮮やかに咲き誇る紫陽花を横目、ようやく純和風な平屋の母屋にたどり着き引き戸を引いた。
「ただいま戻りました」
そんな声を響かせ中に入れば、鼻腔をくすぐる檜の匂い。
嫌いではないけれどどこか自分には圧を覚える匂い。
もう何度目かの息を吐き出し、何度目かの意を決したタイミング。
「寧々ちゃん、おかえりなさい」
「沙々ちゃん、」
長く薄暗い廊下の向こうから、私に気がつき屈託のない笑みで近づいて来たのは姉の姿だ。
品の良い着物を纏い、足早に廊下を進み抜けてくると私に両手を伸ばして歓喜をしめす。
この姿にばかりは自然と口の端も上がって、張り詰めていた緊張の糸も自然と緩んだ。
ますます、綺麗になったような気がする。
「ただいま、」
「久しぶりね。全然顔だしてくれないのだもの。これでも寂しかったのよ?私もお爺様も、」
お爺様…も?
姉だけのそれなら素直に受け入れられるも、付属した存在に対しては複雑な笑みしか浮かべられない。
今更私の存在に気にかけてくれていたのだろうか?と、疑惑の方が勝ってしまうのだから。