Lingerie~after story~
「先刻……徳嶺の主人から申し出を受け…お応えした。お前の心遣いや気品ある姿に実に惚れ込まれたそうだ」
「そんな、私は何も、」
「『何も』という無意識にその品が現れていたのなら、それは褒め称えるべき事だろう」
「っ……ありがとうございます」
なんて不思議な感覚なのか。
初めて、祖父に認められたように褒め言葉を向けられた気がする。
だからこそ、胸に疼くこの感情は素直なる歓喜からの物だろう。
気を抜いてしまえばうっかり弧を描きそうな口元をしっかり制御して、再び深々と頭を下げて腑抜けそうな顔を隠した刹那。
「お前を……実に気に入られたそうな」
「……はい?……と、いうと?」
「気に入られて、是非徳嶺の家に輿入れしてはくれないかと申し出があった」
「輿…入れ……」
「徳嶺家のご長男の嫁にと主人自らお前を所望された。息子の嫁にお前なら申し分ないと」
「っ……」
「徳嶺と水守、お互いにその名も位も申し分なく、各々の繁栄や伝統の伝承においてもこれ以上ない話だ。水守の家としては断る理由もなく、まずは婚約と言う形で次の日曜に顔合わせの席を設けた」
「ちょっ……待っ……待ってください!」
だって、
本当に待ってよ!!
思わず声を荒げてしまってもおかしくはない場面であると思う。
本人を介さずいつの間にか話は一気に進んでしまっている段階での報告なのだ。
だって……輿入れって……嫁って……
婚約って……何よ?