Lingerie~after story~
苦痛だと思っていた。
居場所が無いと思っていた。
それでも本当に芯から憎まれているなんて思った事もないし憎んでいると思った事もない。
畏怖はしても嫌悪はしていない。
姉が言う通り感謝すべきであるのも分かっているのだ。
それでも、
「寧々ちゃん、」
「っ……」
「今ここで、そのお付き合いしてる人に電話して事情を告げなさい」
「でも……」
「寧々ちゃんが出来ないというのなら私が嫌われ役を買って出てもいいのよ?でも……事が大きくなってその人のこれからの生活に影響が出ても困るでしょう?」
「っ………」
姉の言葉にここまで畏怖を覚えたのは初めてかもしれない。
今後の生活?
確かに水守の家の権力を使えば人一人の今後を左右できるほどであると思う。
それを匂わせる脅しの様な一言には太刀打ちできる術もない。
私が今背いてしまえばだ、すぐにでもその危害が九条くんに及ぶのだ。
だとしたら、今出来る私の行動なんて一つしかない。
結論が出てしまえば傍に置いてあった鞄に手を伸ばし中から携帯を取り出した。
着歴を開けばすぐに表示される彼の番号。
九条くんに電話をかけるのにこんなに躊躇った事はないだろう。